Yumekoの花癒し

花との暮らし 花とポエム ショートエッセイ ほんわか日記 豊かな心よ花開け!

ウサギとカメ、もうひとつのハッピーエンド

ゴールの旗が視界に入ってきたウサギが振り返るとカメはまだ遥か遠くでエッチラオッチラと歩を進めています。

「これなら大丈夫。ちょっと休んでからゴールを決めるか!」

ウサギは青い草に寝転がり、しばらく昼寝をした後に一番乗りでゴールの旗を掴みました。

 

カメがゴールの旗が立っている丘のふもとにたどり着き、頭を持ち上げるとウサギが悠々と旗を振っている姿が目に入りました。

「どんなに頑張っても結果に繋がらなかったよ。出来る限りのことをやったのに。」

 

すっかり落ち込んでいるカメの甲羅に一羽の鳥が舞い降りてさえずりました。

「ピチピチピチ、私は空の上からずっと見てたの。大きな石がたくさん転がってたり、窪みや坂の絶え間ないこの道をカメさんは本当に一所懸命進んでいたね。」

「それにほら、周りをよく見て。」

 

ゆっくり首を回しながらカメが周囲を見てみると、小鳥ばかりでなくカエルやタヌキ、シカにイノシシや仲間のカメなど数え切れないほどの生き物たちがカメを見守り応援していました。カメの絶え間ない歩みに皆が感動し、また励まされていたのです。それはこのレースがどのような結果になろうとも揺るがないものでした。

 

「ピチピチピチ、君は幸せなカメさんだね。結果が出る前からそして結果に関わらず、すでに幸せを手に入れているよ。」

「頑張っているカメさんを非難する生き物はここにはいないから安心してね。」

 

小鳥がカメの頬を優しくつっつき、そして微笑んでさえずりました。