年老いた老婆はロッキングチェアーに腰を預け
皿洗いの少年が揚々と謳いながら
次々に皿を洗い上げていく姿を
ユラリユラリと眺めてる
初めて少年を見かけた日から
うちに眠る才能と情熱を訳もなく認め
老婆にとってのそれは
密かな宝物
少年は若いのだ
年老いた老婆は
用意していた季節の贈り物をしまい
少年の誕生祝いを胸に秘めたまま
ロッキングチェアーに腰を預け
ユラリユラリ
フリースの膝掛けと膝の間には札束が一つ
夢を謳う少年のために使いたいと
誰にも見つからないように
老婆は長患いの床から抜け出して
ロッキングチェアーに腰を預けたばかり
焼き切れた脳を空白に浸し
若かりし少女に戻る日を夢見てる
夢がどこに届くか分からないまま
やめられもしない
物言えぬ老婆の
少年への想い