皿洗いの少年の日々刻々と変化し伸び行く
無限の伸びしろに感化され
老婆も歌を謳ってみてはどうかと
思うようになっていきました
試しにロッキングチェアーの揺れに合わせ
ささやかに歌い
やがて背もたれから体を起こして
声を膨らませ
いつしかロッキングチェアーから立ち上がって
皿洗いの少年のように
歌は、この老婆を
不安と可能性の間を行き来する堂々巡りから
解放してくれるのではないかしら
若かりし少女の心へと
引き戻してくれるのではないかしら
歌は、
歌は、
穏やかに歌い合ったなら
少年の悲しみの旋律を
忘却の彼方へと連れ行くことが出来るかしら
嗚呼、
緩やかに手を引いて
もつれそうな脚で
年老いた老婆がどこまでステップを踏めるか
不安だけれど
皿洗いの少年に
孤独のダンスを踊らせたくはないのですから